"Next To Normal"東京公演をシアター・クリエで観てきました。
私は、JCSの感想ならソッコーで書けると思うのですが、ほかの作品については、1週間から10日くらい経過しないと、頭の中が整理されないみたいです。下手すると、まったく書かないで終わることもあるのですが、この作品については、ツイッターやメッセージで、「ぺ猫さん、感想をブログで書いてくださいね~」と言われてるので、頑張って書いてみたいと思います。 観劇前からツイッターでは、N2N("Next To Normal")を観て感動した!また行きたい!という感想をたくさん見かけていて、映像も音源もまったくと言っていいほど予習していなかったのですが、あまり知識を仕入れていかなくても大丈夫そうだな~と、軽い気持ちで劇場に向かいました。 東京公演も終盤の平日マチネ。。。 脚本・歌詞=ブライアン・ヨーキー 音楽=トム・キット オリジナル版演出=マイケル・グライフ ダイアナ:シルビア・グラブ ゲイブ:小西遼生 ダン:岸祐二 ナタリー:村川絵梨 ヘンリー:松下洸平 ドクター・マッテン:新納慎也 ストーリーについては、当ブログとご縁のあるstraycatさんとEmilyさんのブログのリンクを貼ります。お二人とも私と感覚的に近いものがあるかもしれません(^_^;)。 「猫の日記」 「Emily's Simple Little Things」 そして、私の感想はここから~。(ネタばれ注意) N2Nで私が、一番期待していたのは、直近で観た「アメリカン・イディオット」で見事な編曲を担当したトム・キットの音楽です。N2Nは、ロック・ミュージカルに分類されていまして、どんなロック・スピリットを感じさせてくれるのだろうという期待がありました。 音楽に関しては、"I'm Alive"という曲をYouTubeで聴いていたので、一番印象に残りました。 ただ、好みかというと、そうでもないです。 作品中、40曲くらいあるんだそうですが、音楽がビンビン響いてくるとか、リズムにのってからだを動かしたくなるというような、そういう場面は無かったです。たぶん、ロック調でも、私が好きな”ロック”とは違っていたからでしょうねぇ。あと、バラードで万感胸にせまるということもなかったです。 一番、素晴らしいと思ったのは、セットです。 パイプを組んだセットの階段を駆け上がったり、駆け下りたり、横に移動するだけで、そこが家なのか、学校なのかコンサート会場なのか、観客が混乱せずに場面を追えるというのは見事でした。 それと、登場人物たちが身に付けている衣装の色で、誰と誰の心情が重なり合っているとか、関係性が似ているということを表していて、最後は全員がパープルをどこかに身に付けて整列するので、あ~やっぱり色彩に意味を持たせていたんだなということを確認できました。 ナマ演奏は良かったのですけど、やっぱりちょっと音量や音響が物足りなかったです。 照明なんですが、何度かスポットライト?がセットに反射して、目を開けていられないくらい強烈だったのがすごく残念でした。たぶん、座る位置によって違うんでしょうねぇ。 俳優さんたちについてですが、私は、どの方のファンでもなく、思い入れは無いため、フラットな気持ちで演技も歌も観賞しました。その日のキャストの中では、ダイアナの夫、ダン役の岸祐二が一番、ミュージカル俳優さんらしく感じました。後半の演技も歌もいいな~って思いました。 第一幕で、ダイアナの息子ゲイブが実は、現実には存在していないのだというくだりや、お医者さんがロックンローラーになって歌ったりせまってきたりする作り方は、アメリカのTVドラマでよく使われているので、あ~、なるほど、と思いました。 古くは『アリーmyラブ』で、主人公にはダンシング・ベイビーが見えたり、音楽が聴こえたり、最近では、『パーセプション 天才教授の推理ノート』で、神経科学の権威である教授は統合失調症を抱え、様々な幻覚、錯覚や妄想にとりつかれている。。というのをすごく巧みに映像で表現してますよね。 さて、今回、私が一番、気になったのは作品そのものでした。 2009年トニー賞3部門受賞、2010年ピューリッツァー賞受賞の衝撃的作品という宣伝コピーの割には、どうにも、その衝撃の度合いが伝わってこなかったというのが正直な感想です。 ちょっと、調べたら、2010年にN2Nがピューリッツァーを受賞したあとに、審査員たちから、この作品が選ばれた選考過程に納得がいかない、というような声があがったそうですが、賞レースではいろんな思惑が働くのは、よくあることですから、今はそれは置いておきます。 予習はしていないと書きましたが、YouTubeで、ブロードウェイの舞台映像をちょこっとだけ観ていたので、主人公のダイアナが精神を病んでいるところまではストーリーを知っていました。 そこから、どうなっていくのかな~と思っていたのですが、日本版で、最初にダイアナの異常な行動が明らかになるシーンで、ちょっと、あれ~って思ってしまいました。 朝、ダイアナが家族の昼食用のサンドイッチを渡したあと、何かがきっかけでカァ~っとなって、一心不乱で食パンをたくさん床に並べてしまうんですね。 でもね、なんかこぉ、あまり狂気を感じなくて。朦朧としている?か、熱か何かにうなされている病人なのかな~っていうような印象を受けました。 もう一点、気になったのが、ダイアナのすごく美しい身なり。(これは、ほぼ日米版共通してると思いますが) 髪もきっちり整っていて、お化粧ばっちり、赤い素敵なドレスに黒のパンプスを履いているんですよ。 Tシャツにジーンズでもない、ましてやジャージーで素足にクロックス、、、なんていう主婦の朝の姿or普段着とは程遠いんです。 そこまでする必要ないかもしれないけど、これから仕事に行く、キャリアウーマンみたいな服装なのはなんでなんだ?う~ん。中流以上のお金持ちのユダヤ系米国人家庭の豊かな暮らしぶりを感じさせたいのかな~。 ちょっと、キレイすぎないかな~。 私は、双極性障害の方の身なりは乱れているものだとか、異常な様子が普通だ、と言いたいのではありません。 大きな喪失感から精神的に病み、家族がそのことを悩んでいるのなら、もう少し違う描き方があるのではないかなという感想を持ったのです。 ここからは、私の個人的な話になるので、ちょっと設定をアレンジして書かせてもらいます。 私は小さいころから、かなりエキセントリックな人たちを見て育ちました。 また、米国に住んでいたころ、子供を突然の事故で失った病気がちな女性の側で、身の回りのお世話をしたことがあります。 子供を失った母親を、どう慰めてあげたらいいのか。 まだ人生経験も少なく、大きな喪失感を味わったこともない若い私には、まったくわかりませんでした。 ただ、そばにいてあげよう。。。それが精いっぱいでした。 彼女の子供は、N2Nの中のゲイブに近い年齢くらいの青年でした。 ダイアナがゲイブを赤ちゃんの頃に亡くしてから、自分の妄想の中で美しい青年に成長させたのと、 ちょうど逆のプロセスをたどったような感じでした。 私の知るその女性は、亡くした息子の小さいときの話をよくしました。 そして、過去形ではなく、現在形で息子のことを話すので、それを聞いた周囲の人たちは、 青年の死と、その母親の悲しみの深さを目の当たりにして打ちひしがれ、とても心配しました。 私も、その女性の為を思い、自分にできることは何でもしようと気丈にふるまっていたために、 心から愛していたその青年の死を、悼むことができなかったのではないか、とN2Nを観て気づきました。 でも、青年の死から既に20年以上の歳月が流れており、直接の家族ではなかったこともあるのでしょうか。私はいつの間にか、その死を受け入れ、悲しい思い出として胸の中にしまうことができていると思います。 ただ、彼の母親は、その後、ずっとずっと苦しみ続けていました。 心理カウンセラーのところには、経済的な理由で行けなかったようですし、 子供を失ったお母さんたちが体験談を話す会に誘われて、1、2度行ったようですが、 そこで他人の子供の話や、メソメソした話なんか聞かされたくない。。。と、 ちょっとイライラしながら言っていました。 外部の助けを一切拒否した彼女を支えるのは、一番身近にいる人たちだけです。 私は、そのとき、ものすごく不安になりました。 このまま、彼女のそばに付きっきりではいられないけれど、 突き放すことはできない。。。 私は彼女と過ごしていた時期、夜ベッドに入るときに、このまま何事もなく朝まで眠れたらいいのに。。。と、毎晩祈っていました。そして、大抵、その願いはかないませんでした 事情で彼女の家から離れたところに住むことになり、何年かして、結局、私は日本に戻ることになったのですが、子供を亡くした女性の苦しみは、永遠に終わることはなく、乗り越えることもできてはいないのだと思います。 私は、子供を失った女性、理由も告げられず夫に出ていかれた女性、自身が重い病気であることを受け入れられない女性、など。。。。正気を保つことが難しい状態の女性たちと接してきました。 そして、身近で支える家族や親せきや友人たちの苦悩も見たし、多少なりとも実際に体験もしました。 ほんとうに病気が言わせているのか、薬のせいなのか、周囲を苦しいめたいがゆえに突飛な行動をとるのか、周囲にいる者たちは、振り回され、傷つき、疲労困憊し、支えてあげられないことで自分を責めたりもします。 お医者に連れていってあげることもできない状況は、多々あるのですよね。 このような体験をしている私の目を通して観たN2Nの世界は、もしかしたら、人の心の闇にまでは迫りきれていないのではないか、、、と感じられたのです。そもそも、そこの部分を掘り下げようとしては作られていない? 去年、米国に滞在したときに現地の友人たちが、切実な問題として話題にしていたのが、医療保険制度のことでした。 日本とは違って、健康保険に入れない人たちがたくさんいます。 例え加入していても、いったん、会社に解雇され、失業したら家族全員が保険を失うのです。 本来なら、とっくにリタイヤしていたい年齢の人たちも、健康保険のことを考えると、そう簡単に引退できないとも言っていました。 また、過去の病歴ひとつで、保険に加入できないなど、ちょっと日本人の感覚では考えられないような話をたくさん聞かされました。 一方、医療保険制度改革がどうであろうと関係ない、という富裕層もいるわけです。 おりしもアメリカ上院が、オバマケアの1年延期と医療機器税の撤廃を盛り込んだ下院の暫定予算案を否決した。。。という報道があったばかりですよね。 N2Nにおいて、ダイアナの状態が不安定になったら薬を飲もう。カウンセリングに行こう。 ショック療法を受けよう、というストーリー展開が、どうにも私にはピンと来なかったのです。 医者のいいなりになって薬漬けになり、記憶まで失ったダイアナを、弱い立場にある「被害者」として描くことで、果たして多くの共感を得られるのだろうか。 ほんとうにドラマティックなのは、母親の愛は亡くなった兄が独占していると知っている娘のナタリーや献身的な夫のダンの深層心理のほうではないのか。 彼等にもっと焦点をあてたほうが、ずっと作品に重みが増すのではないか。。。などと考えてしまったのです。 そして、最後にダイアナは、実家に帰るんですね。 唐突に登場する実家。 えええ? 彼女が年老いた両親の面倒を見るのではなく、看てもらえるってこと。。。か。 帰れる場所がある人なんだ。。。 確かダイアナって、活発で、決して大人しい娘ではなくて、折角、大学まで進学して将来に希望を描いていたのに、若くして妊娠して結婚してしまったんだよなあ。 両親は、そういう彼女をずっとずっと、サポートしてきたんだろうなあ。 そうじゃないと、すんなり出戻らせてくれないし、両親にだって生活に余裕がなくちゃ、物理的に受け入れられないでしょう、普通に考えても。 もしかして、娘のナタリーが、悩みながらも母を想い、優秀に育ったのは、おじいちゃんやおばあちゃんの支えがあったからなのかな~。 なんていう想像をしました。 ドラマとして、どうもシャキっとこないんです。このあたりの展開が。。。 ほんとうにダイアナは、自分と向き合えるの? 最後の曲は、『Light』 光、というのは確かに希望の象徴なのですが、私にはちょっと宗教的な希望のようにも受け取れました。 キリスト教でも光は重要なんだけど、ユダヤ教の光と喜び、、、っていうのが思い出されたのは、それこそ私の思い込みかな~(^_^;) 大丈夫、きっとうまく行く。。。。と、まとめてしまう? 自分を見つめ直すために、実家に帰る。でも、自立はまず難しいダイアナ。 夫は、カウンセリングを受けて、悲しみを吐露する場所を得る。 娘には優しいボーイフレンドがいる。 幻影のゲイブは~、え~と。いなくなる? メッセージとしては、 普通の隣りでいいんだよ。 何が正しいかなんて誰にもわからないんだ。 ありのままを受け入れよう。 ・・・・たった一回の観劇で、英語の歌詞やセリフの中身がすべて翻訳できていないハンデがあるのだから、私が作品で感じた違和感は、もしかしたら米国で観たら、解消されるのかもしれないですが。。。 あとは、もうシッチャカメッチャカで、音楽ガンガン鳴ってて、みんなヘッバンして、ちりばめられているユーモアや自虐的な笑いの要素を最大限引き出す。。。みたいな演出のほうが、私には踊らされている人間たちの哀しみが伝わるのかな~なんて。ちょっと脳内変換したりしてるんですよねぇ。。。そんな私こそ、ノーマルからは程遠いかな~(^▽^;) ということで、 ピンと来ない私のN2Nの感想は、ひとまずここで終わり。 長い文章を読んでいただいてありがとうございました~~。 追記 この感想文を書いてみて、私はN2Nは自分の過去の辛い思い出とリンクすることが多過ぎて、心穏やかに観ることはできないのかもしれないな~と感じました。少なからず似たような経験をして、渦中を知っている人間からすると、どうしても心から楽しめない部分はあるんだなということも感じてます。 純粋にN2Nの美しい楽曲を楽しめる日が来るといいな~と、心から思います。 アマゾンの購入者レビューで、観劇する前にこれ↓を読んだほうがいいと書いてあります。 米国人でも、歌詞を聞き逃してる部分がたくさんあるそうです。
by tomokot2
| 2013-10-03 03:37
| ペ猫が観た舞台・ライブ
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