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JCSって何? メモ その2 
「JCSって何?」のメモ その1 で1969年に作品が誕生したと書きましたが、クイーンは何をしていたか。

JCSって何? メモ その2 _d0079799_24230.jpg考えてみると、クイーンとJCSは同じロンドンで始まっていて、しかもぴったり時期が重なるんですよね。

1968年に、ブライアンとロジャー、そしてティム・スタッフェルがバンド、「スマイル」を結成しましたが、翌69年に解散しました。フレディが参加して、バンドを結成。JCS誕生の年。

1970年にジョンが加入。JCSは、同年、2枚組LPとしてリリースされ、ミリオンセラーになりました。

71年、「クイーン」と名付けられた年に、JCSはブロードウェイで初舞台化。

73年、クイーンが初シングル「Keep Yourself Alive」をリリースした年に、JCSの映画が封切られました。


クイーンに対するメディアの評価は当時散々だっだのですが、JCSもアルバムセールスは良かったにしても、社会的にかなりセンセーショナルに受け取られました。

そもそもどうしてイエス様がロックを歌わなきゃならんのよ?


JCSって何? メモ その2 _d0079799_2141632.jpg70年リリースのコンセプトアルバムの中のイラスト (ゴルゴダの丘になっています) →


JCSで作者が表現しようとしたのは、「人間、イエス」でした。

JCSは宗教的な作品として創作されていないのです。イエス・キリストは、聖書の中、教会のステンドグラスの中にいる「神様」ではなかった。最初は、普通の一人の男だったのだということを、ユダの視点で語らせているのです。

イエス様が主体となってストーリーを展開させるのではなく、最初にユダが疑問を投げかけてストーリーを始めるところがミソなんです。ユダは、イエスは、「神の子」だとは信じていないのです。

オープニングにユダは歌います。

   今、俺にははっきり分かるんだ 。
   あの男から神話をはぎ取ったら、やがて俺達はどうなるのか。

   イエスよ、民衆はおまえの噂を信じ始めている。奴らはおまえの説く
   神が本物だとまともに信じている。おまえのやった奇跡もすぐに忘れ
   られるだろう。おまえは自分の説教よりももっと重大なことを起こしたんだぞ。

   イエスよ、俺は今の状況が気に入らない。頼むから俺のいうことを聞いてくれ。

   俺がずっとおまえの右腕だったのを忘れてないだろう?
   おまえは民衆をたきつけた。 奴らは新しいメシアが来たと思いこんでいる。
   奴らは自分たちが間違ったと気がついたら、きっとおまえを殺すぞ。 

   最初はおまえも神の話なんかしなかった。
   みんなおまえをただの人だと思ってた。

   信じてくれ。おまえに対する気持ちは変わってないんだ。
   だけど近頃おまえの言ってることはどこか変だ。
   奴らはおまえが嘘をついたと知った途端、きっとおまえを 殺すぞ。

   おおナザレよ!おまえの有名なこの息子は無名なままでいるべきだった。
   奴の父のように家具細工をやってればよかったんだ。奴ならできたはずだ。
   イスや樫の木のタンスなんかがお似合いだったんだ。それなら誰にも苦しみや
   恐怖を与えずに済んだだろうに。

   イエスよ!おまえはユダヤの民が好きなのか?
   俺たちはここでじっと我慢しなければならないのが分からないのか?
   俺たちは支配されているんだ。俺たちがどんなに打ちのめされているのか
   忘れたわけじゃないだろう?おれはこの大騒ぎしている奴らが怖い。
   ことがあまりに大きくなりすぎたからだ。
   これ以上やりすぎると奴ら( ローマ軍)に完璧につぶされるぞ。

   イエスよ、俺の言うことを聞いてくれ。俺たちだって生き延びたいんだ。
   しかし、おそらくは恐怖に縛られて生きていくはめになるんだろう。
   お前のそばにいる奴らは何も分かっちゃいない。現実を見ろというんだ。
   理想の話はそれはそれで良かったんだが今となっては辛いことだ。
   本当に辛いことになってしまった。


この「彼等の心は天国に Heaven On Their Minds」にユダのスタンスのすべてが表現されており、この曲が最後に「スーパースター」というナンバーとして完結する訳です。

あの~、こういう例えはあまりよくないかもしれないけど、・・・。

新撰組」や、「忠臣蔵」のようなよく知られた物語を、若い脚本家、演出家がまったく新しい視点で描くことで、年寄りが好む時代劇から、若い世代が熱狂する芝居に生まれ変わる。

或いはシェイクスピアの「ロミオとジュリエット」が設定を変えて「ウェストサイド物語」になり、「ピグマリオン」が「マイフェアレディ」になる


聖書物語に同じことが起きたのが、「ジーザス・クライスト・スーパースター」なのかな~と思うのです。ただ、「聖書」はただの物語ではなく、キリスト教そのものですから、それはそれは、大変な騒ぎになってしまったのです。

この辺、クリスチャンでない観客には、なかなかわかりにくい部分です。
宗教的論争はさて置き、人間が巧みに描かれたしっかりした物語で、現代の音楽で語られ、生き生きした俳優達が演じたなら、クリスチャンであってもなくても感動する作品になり得るのです。

JCSって何? メモ その2 _d0079799_3335385.jpgライスとロイド・ウェバーは、宗教的、歴史的な角度からイエスを描くのではなく、聖書の時代に、実在していた人間達の物語を作ろうとしたのでした。だから、聖書の内容をくつがえしてはいませんが、人物解釈に幅をもたせています。ドラマ化にあたって、オリジナルな脚色しているのです。

ユダとイエスの対立にマグダラのマリアをからませるという、禁じ手(と言っていいでしょう)を使っています。
聖書においては、確かイエスが亡くなってからマグダラのマリアは登場するという解釈なのだと思います。(イエスの足に香油を塗り、自分の髪で拭いた女性もマリアという名前だったかと思いますが、必ずしもマグダラのマリアとは限らないのですよね確か。ごめんなさい、間違っていたら。)

この人間模様が、作品を面白くしているのですよね~。
なにせ「愛憎」がからんできますから・・・。

ジーザスクライストスーパースターという作品は、「ロック」という音楽の特性すべて備えています。
「対立」と「和平」、「愛」と「憎しみ」、「情熱」と「理性」、「夢」と「現実」、「保守」と「革新」、「生」と「死」、「美」と「醜悪」、「疑い」と「信頼」、「静」と「動」、「善」と「悪」、「光」と「影」。。。。いくらでもあります。相反する要素のかたまりです。

←この様子はやっぱり、「三角関係」ですよね~。さて、この人たちは、一体、誰をめぐってこんな難しい顔をしているんでしょう。。。
by tomokot2 | 2006-10-09 23:59 | JCS作品&基礎知識


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